はじめに
恐竜はおよそ6600万年前、巨大隕石の衝突によって絶滅したと広く考えられています。しかし近年、一部の研究者の間で「恐竜は絶滅後もしばらく生き延びていた可能性がある」という説が注目されています。そしてこの説を支える手がかりのひとつが、かつて存在していた超大陸「ゴンドワナ大陸」に関する地質学的な発見なのです。
本記事では、ゴンドワナ大陸の概要から、恐竜絶滅後の世界、そして恐竜生存説までを詳しく解説します。
ゴンドワナ大陸とは何か?
ゴンドワナ大陸は、かつて地球に存在した超大陸のひとつで、約5億年前に出現し、約1億8000万年前に分裂を始めました。この大陸は現在の南アメリカ、アフリカ、インド、オーストラリア、南極大陸などを含んでいました。
この大陸の存在は、地層や化石、鉱物の分布などから20世紀初頭に理論化され、プレートテクトニクスの進展とともに実証されてきました。特に恐竜の化石が、南アメリカとアフリカなどの遠く離れた場所で類似していることは、かつてそれらがひとつの大陸に属していた証拠となっています。
恐竜絶滅の定説:巨大隕石説
現在広く支持されているのは、「K-Pg境界絶滅」と呼ばれる巨大隕石の衝突による説です。メキシコ・ユカタン半島にあるチクシュルーブ・クレーターがその証拠とされ、衝突によって地球規模の気候変動が発生し、食物連鎖が崩壊、恐竜をはじめ多くの生物が絶滅したと考えられています。
生き延びた恐竜の痕跡?
しかし、近年になって南アメリカやマダガスカル、南極大陸など、かつてゴンドワナ大陸の一部だった場所で「絶滅後の地層」から恐竜らしき足跡や骨の断片が発見される事例が報告されています。これらは、K-Pg境界を越えた時代の地層に見つかっており、定説に挑む新たな証拠として注目されています。
たとえば、南アメリカのパタゴニアでは、従来の時代区分よりも新しい時代に属する堆積層から、ハドロサウルス科のものと考えられる化石が報告されました。このような発見は稀である一方で、調査の進展とともに再評価されつつあります。
ゴンドワナの孤立と進化の隔離効果
ゴンドワナ大陸の分裂とその後の地殻変動によって、南半球の大陸は北半球とは異なる生態系のまま隔離されました。この”隔離環境”が、一部の恐竜たちにとって生存に有利だった可能性も指摘されています。
進化の速度は環境や捕食者の有無に大きく影響されます。ゴンドワナ由来の大陸では、食物網の崩壊が比較的緩やかだった地域もあったのかもしれません。その結果、ある種の恐竜が“絶滅を免れた”可能性もあるのです。
鳥類として生き残った恐竜
もちろん現在でも、恐竜の一部は”鳥類”として進化し生き残っているという考え方が、科学的には主流です。実際、鳥類は獣脚類と呼ばれる二足歩行の肉食恐竜から進化したとされ、羽毛のある恐竜の化石も数多く発見されています。
このため、「恐竜は完全に絶滅したわけではない」とも言えるのですが、ここで言う“絶滅を免れた恐竜”とは、非鳥類型の恐竜のことを指します。
地層の年代測定とその限界
「絶滅後の恐竜化石」という発見が議論を呼ぶのは、地層の年代測定にも限界があるからです。地質学的な年代推定は主に放射性元素を使った方法で行われますが、誤差が数十万年単位で出ることもあります。
そのため、ある化石がK-Pg境界を越えた地層から出てきたように見えても、実際には“再堆積”といって古い化石が後の時代の地層に紛れ込んだ可能性も否定できません。こうした不確実性が、「恐竜生存説」を確定的にすることを難しくしています。
恐竜は本当に絶滅したのか?
これまでの証拠から見れば、非鳥類型恐竜はK-Pg境界でほぼ絶滅したという説が有力です。しかし、「ごく短期間だけ一部の恐竜が南半球で生き延びた可能性」は、完全には否定されていません。
たとえば、隕石衝突後の地球環境でも、太陽光が届きやすい赤道近くや温暖な地域では、植物が生き残り、それを食べる草食恐竜も生き延びたかもしれないという仮説も存在します。その後の捕食者不足や繁殖環境の変化で徐々に消えていった可能性があるのです。
まとめ
ゴンドワナ大陸の存在と、その分裂による地球環境の変化は、恐竜の生態にも大きな影響を与えました。そして近年の研究では、「恐竜が絶滅した後も、短期間あるいは限られた地域で生き延びていた可能性」が浮上しています。
この説を完全に証明するには、より多くの化石証拠と、精度の高い地質調査が必要です。しかし、今後の研究次第では、恐竜絶滅の歴史が大きく塗り替えられるかもしれません。まさに、恐竜の物語はまだ終わっていないのです。
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